ゼロゼロ物件は危険!?
「ゼロゼロ物件は危険だからやめた方がいい」という流布記事がネット上に散見します。結論から言うと、危険ではありません。
但し、「ゼロゼロ物件」は、いくつかの種類があり、その内容をしっかり理解していないと…。
「えっ、そんなのきいてないです、それじゃ詐欺じゃないですか!?」
ということになりがちです。
ここでは、「ゼロゼロ物件」の特徴を詳しく解説し、内容を理解して安全に契約する方法を解説します。簡単に理解できますので、初期費用の安いゼロゼロ物件を安心して契約してください。
ゼロゼロ物件は主に3タイプ
ゼロゼロ物件は大きく分けて、3タイプあります。そこから派生するタイプもありますが、3タイプをまずは押さえましょう。
単純に敷金礼金がゼロゼロの物件
まずは、単純に敷金礼金をゼロゼロに設定している物件です。
基本的に古い物件などで人気が無く、家賃を限界まで下げても決まらず、苦肉の策に敷金礼金もゼロにしないと決まらないような物件のケースが多いです。
家賃も安く、敷金礼金もゼロゼロなら、金銭的にメリットがあるので、築年数や日当りとか広さとか妥協できる点がいくつも出てきて魅力的な物件に大変身!となるわけです。
つまり、注意するポイントは、「安くていいじゃん!」だけではなく、「なんで決まらなかったのかそのポイントを確認し、その点が自分自身が全く気にならない」という事だけです。
契約メニューのひとつのゼロゼロ物件
「ゼロゼロ物件」は契約メニューのひとつのケースがあります。
具体的には、同じ物件の部屋で①「敷金・礼金あり」タイプと②「敷金礼金ゼロゼロ」タイプの2つのメニューがあってどちらか選べるというものです。
『同じ部屋だったら、ゼロゼロの方がいいに決まってる!』との声が聞こえてきそうですが、さらに具体的に説明します。
①敷金1ヶ月+礼金1ヶ月 家賃5.0万円
②敷金0ヶ月+礼金0ヶ月 家賃5.4万円
更に、②には「短期解約違約金」条項が付きます。
『短期解約違約金』の一般的な条項は下記の通りです。
ということで、携帯電話の契約プランのような条項です。(厳密にいうと違います)
この条項の理屈は、「敷金・礼金は最初はゼロでいいから、家賃は月々ちょっと高くしますよ。でも、途中で解約しちゃったら、礼金はもらえないし、敷金で基本清掃もできなくなっちゃうから、その分は短期解約違約金という名目であとから回収しますからね。」というものです。
もっとわかりやすくいうと、「敷金礼金は分割払いね。途中で解約したら分割の残りは一括支払いね!」ということです。
ちょっと乱暴な言い方で、敷金の特性とか、賃料という名目とか、厳密にいうとグレーなんですが、そういうことになってます。
現状は、家賃はちょっと高くても初期費用が安い方がいいというニーズが多くて発生した「商品」のひとつなで、人気があるのが実際のところです。短期解約した時は、なんだかすごく損した気分になりますが、2年を過ぎて更新すると、家賃が下がるケースが多いのです。
2年経過後に解約する場合にも、「ゼロゼロ物件」は賃料に清掃費用もオンされていますので、故意過失による汚損・破損(汚れや傷)が無ければ、退去時も何も請求はありません。
このように、このタイプのゼロゼロ物件は、2年以上住む人は全くおいしい契約メニューといえます。
この場合のポイントは、何か事情があって2年以内に短期解約する場合には短期解約違約金は発生するものだ」ということをしっかり認識して契約することです。
※物件によって退去時の清掃費が発生するケースがありますので、個別に契約内容を事前に確認しましょう。
敷金ゼロ礼金ゼロ契約 一択の物件
新築物件でもリノベーション物件でも、敷金ゼロ礼金ゼロの物件が増えています。最初に記述したようなゼロゼロにしないと入居者が決まらないような条件(古い、狭い、駅から遠い等)ではない、素敵な物件でもゼロゼロの物件が増えています。
より良い物件を早く部屋探しをしている人に選んでもらって、家賃の収益化を早くしようという大家さんの投資効率を高めるための物件です。特に何か裏があるのでは?という疑いは持つ必要はありません。
但し、注意点は下記の通りです。
- 短期解約違約金の条件はあることも多い
- 退去時の清掃費用(クリーニング)は実費負担とする
短期解約違約金に関しては、実際に大家さん側から見ると、契約期間が短いとギリギリ低い家賃設定で、数か月しか家賃を受け取っていない段階で退去があると、収支上、赤字になります。退去後の後のクリーニング、内装費などは入居期間に係らず発生します。痛しかゆしですが短期解約違約金を設定しないと、家賃自体を高くせざるを得なくなるでしょう。
入居者からすると、何らかの事情で、短期で退去する場合は、支払いが発生する分、損となりますが、2年以上住む場合は、初期費用が安く、家賃も変に上乗せされることはないので、得ということになります。
敷金と礼金が無くなってきている理由
市場原理で、物件同士の競合が激しい地域では、敷金・礼金自体の概念が無くなりつつあります。礼金はそもそも関東地域のみの慣習です。
礼金が無くなっている理由
礼金は戦後、焼け野原になって家が圧倒的に少なくなったとき、大家さんにお礼を余分に支払ってでも「借りさせていただいた」時代の名残といわれています。
今は、物件が余っているので礼金があると、入居者が決まりません。逆に大家さんがお礼を支払って入ってもらう時代です。(お金を支払うというより、フリーレントといって、一定期間の家賃を無料にするというもの)
敷金が無くなっている理由
敷金は目的は2つあって、家賃滞納があった場合の担保として、もう一つは、退去した後の補修費用としての預り金です。(但し、本来は、部屋が故意過失によって、壊れていたり、汚れがひどかった場合の補修費用としての預かり金ですが、経年劣化という住んでいれば自然に発生する本来は大家さんが負担すべき費用も敷金から充当することが横行していたのです)
これも今は、家賃滞納は賃借人が保証会社に加入してもらうことにより、大家さんの家賃は保証されています。
補修費用に関しては、東京ルールの制定を象徴するように、大家さんが負担すべきもの、入居者が負担すべきものが明確化しました。乱暴に部屋を使用るというレアケースの入居者の為に預り金を多くあずかろうとして、そもそも全体の入居者が入らなくなったら、そのこと自体が家賃収入の機会を少なくしてしまいます。そして、先程の保証会社が、故意過失による原状回復費用も大家さんに保証するようになっているます。
という理由から、敷金に関しても預かる意味が少なくなってきたのです。
退去時清掃費実費とは?
ゼロゼロ物件では、「退去時清掃費用実費」という条項があるケースがあります。大家さん(不動産管理会社)によって、微妙に解釈や金額が異なりますが、ワンルーム(1K)タイプで、2万円~3万円程度のクリーニング代を請求されます。
これは重要事項説明書や賃貸借契約書に特約として目立つように赤字などで書かれています。こういった特約は宅建業法では、法外な金額でなければ、しっかり、借主が認識・承諾すれば認められているもので違法ではありません。
しかし、説明が無かったり、金額が記載されていない時は、どれくらいかかるのかを具体的に聞いて書面に残してもらうことをおすすめします。
ゼロゼロ物件が危険といわれた事件とは?
そもそも、なぜ、ゼロゼロ物件が危険であるといわれたか説明します。
一部の悪徳業者が、いわゆる低所得者を対象に貧困ビジネスを行っていたことが発生源なのです。
「敷金ゼロ、礼金ゼロ、仲介手数料もゼロ」をうたい文句にして、入居させます。そして、家賃の支払いが1日でも遅れると、無断で鍵を交換して入室できないようにします。
鍵を開けるためには、遅れた家賃に加え、家賃の1割にあたる違約金と数万円の施設再利用料といったわけのわからない支払いを強要したという事例(というか事件)があり、当時、ニュースで大きな社会問題となったのです。
そのため『ゼロゼロ物件は危険だ!』という先入観だけが独り歩きしてしまったというわけです。
ですから、一般の不動産会社のゼロゼロ物件は、いくつかの細かい条項はあるものの、誰でも説明を受ければ理解可能ですし、危険であるというわけではありません。
まとめ
「ゼロゼロ物件は危険」というのは、一部の悪徳業者の行った事例であり、一般の不動産会社のゼロゼロ物件が危険ではないのです。
それぞれのゼロゼロ物件の特徴を理解し、また、その中の「短期解約違約金」や、「退去時清掃費」の特約のかかる金額を確認、理解、承知しておけば全く問題ないどころか、安くていい部屋に住むことができるのです!